ロジェ・マルタン・デュ・ガール『チボー家の人々』
長編小説を理解するためのメモ
『チボー家の人々』全巻を、今度比較的短時日の間に世におくることの出来るのは何よりもうれしい。思えば第一巻「灰色のノート」 の翻訳を出してから今年で十一年、第七巻「父の死」までを出して、いよいよ問題の「一九一四年夏」の巻にかかろうとして、そこに盛られたアンチ・ミリタリスムの思想から続刊不能を余儀なくされ、遂に今日を待たなければならなかった。つまり私としては『チボー家の人々』の翻訳を完成するために、原作者ロジェ・マルタン・デュ・ガールがこの大作を完成するに要したと殆んどおなじだけの年月を要したということになる。
山内義雄『遠くにありて』(1975)より抜粋


深代惇郎エッセー集『チボー家の人びと』(1965.7.18~25)
『チボー家の人々』(Les Thibaults)
ロジェ・マルタン・デュ・ガール(Roger Martin du Gard, 1881-1958)

1922年 第1部 灰色のノート(Le Cahier gris)
1922年 第2部 少年園(Le Pénitencier)
1923年 第3部 美しい季節(La Belle Saison)
1928年 第4部 診察(La Consultation)
1928年 第5部 ラソレリーナ(La Sorellina)
1929年 第6部 父の死(La Mort du père)
1936年 第7部 1914年夏(l'Été 1914, 1 [1-24] 2 [25-54] 3 [55-85] )
1940年 第8部 エピローグ(l'Épilogue)

・和訳:山内義雄(白水社)
・フランス語版PDFが、以下のURLからダウンロード可
・英訳版PDFも次のような2分割で、以下のURLからダウンロード可
 第1-6部
 第7-8部 Part 1 [7: 1-24, p.7] Part 2 [7: 25-54, p.188] 
      Part 3 [7: 55-85, p.402 ] Part 4 [8, p.667] 
 (ただし、英訳版 Part 1-3 の章番号は、オリジナルに対応する続き番号でなく、それぞれ 1 から始まっているので注意)
Fadedpage.com
https://www.fadedpage.com/csearch.php?author=du%20Gard,%20Roger%20Martin
時代設定
『1914年夏』を除けば、年月が明確でないところが多い。その中でいちばん明確なのは巻末の文章(Antoineの日記)の以下の記述である。
Lundi, 18 novembre 1918.
37 ans, 4 mois, 9 jours.
Plus simple qu’on ne croit.
 これ以外では、例えば
1-6 「3月17日 月曜日」が正しければ1902年、「4月7日 月曜日」が正しければ1902年。しかし、1904年なら木曜になる。いずれにせよ翌日4月8日はダニエルの14歳の誕生日であることは確か。
1-4 「5月2日 日曜日」が正しければ1902年は金曜日、しかし1904年なら月曜日になる。
以上から、1914年以外は適当に書かれたものと思われる。1904.5.2(日)から始まり1918.11.18 (月) に終わる。
名前 生没年 年月日、年齢、背景…などが分かる
訳書の巻と節
Oscar Thibault 1850-1913  
Lucie Thibault       ?-1890 母、Jacques 出産直後に死去 3-5
Antoine Thibault 1881.7.9-1918.11.18 長男 13-16
Jacques Thibault 1890-1914.8.10 次男  
Jean-Paul Thibault 1915.6- Jacques と Jenny の長男 11-72
Jérôme de Fontanin          -1914.7.19 8-18
Thérèse de Fontanin 1865- 3-5
Daniel de Fontanin 1890.4.8- 長男  
Jenny de Fontanin 1891- 長女  
Mlle de Waize 1835-1918.5.3 Lucie Thibault の代理 (Mlle: mademoiselle) 5-1, 12-1
Gise/Gisèle de Waize 1894- 姪(Waize 少佐がマダガスカル滞在中にめとって
生まれた混血児)
1-7, 1-8, 3-5, 7-5, 7-11
Noémie Petit-Dutreuil 1869-1910.8 Thérèse de Fontanin の従姉妹 1-4
Nicole Petit-Dutreuil 1889- Noémie の娘  
Lisbeth 1886- Mme Fruhling の姪 2-7, 2-9, 2-12
Mariette Fontanin 家の元女中 1-4
Simon de Battaincourt 1990- Jacques の友だち  
Anne de Battaincourt 1876- 未亡人で Simon の妻 3-5, 10, 57-65
Rachel Gœpfert 1884-1915.5 3-3, 4-9, 4-14, 12-3

1979.2 Oscar と Lucie 結婚
1881.7.9 Antoine 誕生
1890 Jacques 誕生、直後に母 Lucie の死
1904.5.2 Jacques と Daniel の家出
1904.6 Jacques 少年園に
1905.4 Jacques、Antoine と少年園から帰宅
1905.6 Jacques と Lisbeth
1910.7 Jacques 高等師範学校に合格
1910.8 Noémie の死
1910 Antoine と Rachel
1910.11 Jacques 失踪
1913.11-12 Jacques 発見、Antoine と帰宅
1913.12 Oscar の死
1914.6.28 サラエボ事件
1914.7. Antoine と Anne
1914.7.19 Jérôme の死
1914.7.28-1918.11.11 第一次世界大戦
1914.7.31 Jean Jaurès、 the Café Croissantで暗殺
1914.8.10 Jacques の死
1915.6? Jacques と Jenny の子 Jean-Paul 誕生
1918.5.3 Mlle de Waize の死
1918.11.18 Antoine の死

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